ノマドの足跡

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尖閣諸島問題と「見られる日本」

南シナ海の支配権を主張する中国とベトナムの艦艇が南シナ海上で衝突。陸上でも中国がベトナムに侵攻。アメリカが空母を派遣するも中国によって空爆を受ける。このとき日本は中立を宣言し、米軍基地は制裁隔離。この機に乗じてインドはパキスタンへ侵攻。しかしパキスタンはイランとともに中国と組む。日本はというと、中国が優勢になるにしたがって中国寄りへと態度を傾ける。中東アラブのイスラム諸国が中国側についたため石油の供給に困った西欧諸国はロシアとの協力関係を進める。同時にボスニアではセルビア人とムスリムとの対立に火がつき、ついにはアルジェリアから南仏に向けて核ミサイルが発射される。。。


中国とベトナムの紛争が世界大戦に発展していくこのシナリオは、すでに15年ほど前にハンチントンがベストセラー『文明の衝突』の最終章で描いたものだ。発端となる中越の紛争がはじまるのは2010年となっている。


今読み返せば多少時代かがったところがなくもない。もっともこうした国家間での武力による「世界大戦」そのものが「新しい戦争」(カルドー)の時代に入った21世紀では現実的ではないのかもしれない。


しかし、アジアを発端とした紛争、とりわけ中国から火がつくというこのシナリオが、当時から懸念されていたことがわかるという意味で、ひじょうに興味深い。それも、米国政府にも深く関与していたハンチントンが、そのベストセラーでこう書いているのだ。現実に中国の経済力と政治的プレゼンスが急拡大してきた現在、米国政府がこうした懸念を念頭に置いていることは容易に想像できる。


ハンチントンの未来予想図は南沙諸島からはじまった。今、日中間で尖閣諸島が問題の火種となっている。やはりアメリカは懸念しているだろう。同時に、同じことが南沙諸島でも西沙諸島でも起きかねない。これらの海域は、尖閣以上に多数の国が複雑に関係している。そこへも飛び火しかねないし、いずれ同じことが起きる確率は極めて高いのだ。今回の経緯をアメリカ以上に固唾を呑んで注視しているのは、これら南シナ海の問題に関係しているベトナム、フィリピン、マレーシア、そしてASEANでこれらの国と関係の深い、インドネシアシンガポールだろう。


思うに、今回の尖閣諸島問題に対する日本政府の対応は、これら東南アジアの国々が固唾を呑んで見守っているということを、少しは意識していたのだろうか?逮捕するにしても、釈放するにしてもだ。


日本人は、とくに日本政府は、外国というとアメリカを意識しがちで、アジアとくに東南アジアのことを意識していないように思う。しかし、これまでもそして現在も、アジアは日本を見ている。だから日本はアジアに見られているのだということを、もっと意識するべきではないかと思う。尖閣諸島の今回の問題は、そういった視点からも顧みられるべきであると思う。