ノマドの足跡

旅、酒、ニュース、仕事関連などなど。思いつくまま書いたものです。

山内和彦 『自民党で選挙と議員をやりました 』


以前紹介しました、想田監督のドキュメンタリー映画『選挙』。
http://d.hatena.ne.jp/kanamaruyuji/20081216/1229425692
その映画の「主人公」、山内和彦さんの本です。
山内さんが立候補した2005年の川崎市議会補欠選挙とその後の議員活動について書かれたものです。
映画でも描かれている、突然の初出馬のドタバタにあわせて、選挙の仕組み(制度・規則)と実態が紹介されています。
まず、選挙の仕組みについていうと、日本における選挙の法規制(公職選挙法)、これは世界でもっとも細かい規定になっているといわれます。
たとえば、選挙事務所に手伝いに来た人に出せるのはお茶とお菓子のみということになっていて、「お茶」ではなく「コーヒー」を出したら選挙違反。もちろん、おにぎりやお弁当はぜんぜんアウトです。


また、選挙運動の実際についても。
たとえば、候補者が自分の妻を呼ぶ場合。
少なくとも自民党では、「妻」や「奥さん」ではなく、「家内」と呼ばなくてはならないそうです。
もちろん、演説の中だけでなく、人に紹介するような場合でも。


こうした、日本の選挙活動の実態は、かつてコロンビア大学のジェラルド・カーチス教授が、大分の選挙区に入り込んで行った先駆的な研究があります(『代議士の誕生』)。
また、より最近のものでは、朴チョル熙『代議士のつくられ方』(文春新書)が、小選挙区になってからの選挙活動が研究されています。


これらと比べると、この本の特色は地方選挙の事例だということでしょうか。
本文中でしばしば強調されているのですが、地方選挙になると国政選挙とは制度も違いますし、何より党の扱いが違ってきます。
最も重要なのは資金面。地方選挙では基本、個人の資金に頼る選挙活動になります。
また、応援も有名な国会議員が来るようなことはありません。
全国二千何百とか言われる自治体がありますから、それらを全部面倒見ることができないのは当然ですね。
ただし、山内さんの場合に限っては、補欠選挙でもあり、また参議院補選と同時進行だということもあって、小泉総理が応援に入っています。
このように、地方選挙での選挙の実際がよく見えるという点でも、興味深い本です。



就職が難しいというせいもあってか、近年では20〜30代の若い人たちが地方選挙に立候補して自治体議員に「就職」するというケースも見られるようになりました。
自身、自民党から直前になって電話がかかってくるまで、選挙に出るなどということは考えたこともなかったという山内氏の経験は、若くして地方選挙にチャレンジしようとする人たちにとっても興味深いものなのではないでしょうか。