ノマドの足跡

旅、酒、ニュース、仕事関連などなど。思いつくまま書いたものです。

吉川潮 『戦後落語史』

戦後落語史 (新潮新書)

戦後落語史 (新潮新書)


本のことを書くのは久しぶりですね。


最近、落語ブームです。
テレビでは新番組が始まったりしてますが、とにかく本がいろいろと出ています。
新書の類だけでも何冊もあります。(たとえば、http://d.hatena.ne.jp/kanamaruyuji/20090220/1235126133


アプローチはいろいろですが、当事者が書いたものは別にして、意外にこの本みたいな「通史」はないのではないかと思います。
各章ごとに、昭和20年代から平成10年代までが、通しでまんべんなく書かれているという体です。
僕みたいな、ごく最近になって落語を聞くようになった人間は、それまでのさまざまな経緯がよくわかります。
とりわけ、落語協会の「分裂劇」みたいな、「戦後落語史」の大事件の経緯もたいへんよくわかります。
これを読んでから、当事者の書いた本(回想録・暴露本など)を読むと、もっとおもしろく読めると思います。(たとえば一昨年話題になった立川談春『赤めだか』とか。http://d.hatena.ne.jp/kanamaruyuji/20090319/1237478796
ごく最近の話題でいうと、先代の円楽亡きあと、円生の大名跡を誰が襲名するのかという「問題」について。
来たる3月17日に鳳楽と円丈との間で、「円生杯争奪」なる落語会が行われます。
一見冗談か話題づくりのように思われるこの落語会の因縁についても、この本でそのふか〜い意味がわかります。
 *「円生杯争奪 落語会」 http://rakugo-kyokai.or.jp/Events.aspx
戦後落語界はなかなかに「政治的」です。
「芸術」と「政治」との狭間で個性的な落語家たちがいろいろな活動を見せてきたのがよくわかります。
芸に対してストイックであったこの先代円生をめぐる問題はその典型といえるかもしれません。
まあ、このように「戦後落語史」が、初心者にもざっくりとよくわかる本書ですが、ただ、「あとがき」で著者も書かれているように、この「通史」が、「立川流史観」になっているのは否めないでしょう。
というより、「談志びいき」です。


ところで。
私が初めて寄席に行ったのは2年半ほど前。「林家木久扇木久蔵親子ダブル襲名披露興業」でした。
この『戦後落語史』199ページの本文の中で、この「親子ダブル襲名」の話が出てくるのは195ページ目。
私の落語キャリアのなんと短いこと。。。まあ、その分、勉強になりました(^_^;)




吉川潮『戦後落語史』新潮新書、2009。