【本】 瀧口雅仁 『平成落語論』
- 作者: 瀧口雅仁
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2009/02/19
- メディア: 新書
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この本は、主に団塊世代以降の、次代を担うリーダーと目される(若手)落語家を11人とりあげ、それぞれに論評を加えているものです。
そこで取り上げられている11人は次のとおり。
立川談春
柳亭市馬
柳家花緑
三遊亭白鳥
立川志の輔
柳家喬太郎
春風亭昇太
林家たい平
林家正蔵
笑福亭鶴瓶
春風亭小朝
どれをとっても納得のラインナップです。
ちなみに12人目は、「二世落語家」と題して、さらに若い世代の「二世落語家」数人を取り上げています。
それにしてもその論評たるや、なかなかに手厳しい!
「談春はほんとうに名人なのか?」
「はたして花緑の落語はおもしろいのか?」
といった見出しを見るだけでも、その挑発は明らかでしょう。
中身を読んでみるとさらにキビシイ!!
「『うまさ』は感じるのだが、落語の『面白さ』を感じることが少ない。」(談春)
「最近になって、花緑の活躍に力が見えてこないことが多くなってきたように思えてならない。」(花緑)
「同時に真打ち昇進した柳家喬太郎や同年代で落語に真っ向から取り組んでいる若手落語家とは、今、相当の差が付けられていることを実感すべきだ。」(たい平)
と、バッサリ。
他方で、よい評価も正当に行われています。またそれが的確でもあります。
私も大好きな市馬の評価は、終始「べた褒め」ともいえるものです。
正蔵などは、こぶ平時代の「ある時」までのあり方はあっさりと批判してますが、「ある時」を境に「ガラリと変わった」ことを正確に捉えて評価しています。
また、志の輔に「一般興業の番組に入ってもらいたい」、「白鳥は圓生を継ぐべき」といった大胆な提案も、大胆なばかりでなく説得力があります。
それにしても、これだけバッサリと切るからには相当に落語を聞いてきたのでしょう。
いいところも悪いところも的確に指摘し、一人一人の落語家の変化も正確に捉えています。
内容にも説得力がありますが、文章にもキレがあって、また読みやすい。
かなり読み応えのある落語評論です。
と、感心して読み終えたあと、一体どんな人が書いているのだろうと著者のプロフィールをみると、「1971年生まれ」とあります。
私と同い年なんですね!
仮に「若手」といっても年代にして40〜50代。
どの噺家をとっても実力・人気ともに備えた「看板」たちです。
その年代にして、その落語家たちを11人ひとからげにこってりと料理してしまうなんて。
いやぁ、恐れ入りました。。。
瀧口雅仁『平成落語論』講談社現代新書、2009。