ノマドの足跡

旅、酒、ニュース、仕事関連などなど。思いつくまま書いたものです。

【ホーチミン・シンガポール】 マーライオン受難

マーライオン受難」のニュースを知ったのは、日本からのメールででした。
マーライオンに落雷があったそうですが」との、職場の人からのメール。その日は日曜日。新聞を読んでいませんでした。



前日の午後は、2007年12月にリニューアルオープンした、シンガポール国立博物館に行っていました。昼頃は天気は良かったのですが、夕方一通りじっくりと見終えてからコンコースに出ると、外は真っ暗。リニューアルされた博物館は中央のコンコースが広々とした吹き抜けの構造になっていて、しかも天井がガラス張り担っています。また、庭に面した壁の一部も、大きなガラスになっていて、外の陽光を取り入れるようになっているのですが、陽光どころか、外がすっかり暗くなっているのです。まだ日の落ちる時間ではありません。スコールです。


東南アジアでは、天気の良い日の午後、しばしばこうしたスコールに遭うことがあります。ぶ厚い積乱雲が天空を支配すると辺りは急に暗くなり、やがて大粒の雨が落ちてきます。ぽつぽつと来たかと思うと、数分もしないうちに前が見えなくなるくらいの大量の雨が降ってきます。そして雷鳴が激しく轟き始めるのです。
昨年の夏、日本では「ゲリラ豪雨」にしばしば見舞われました。ちょうどあんな感じです。雲の感じ、雨の強さ、突然吹き始める風、激しい雷。「ゲリラ豪雨」と名づけられたものの、あれは「スコール」に違いないと思ったものです。
あの「ゲリラ豪雨」を思い起こしてもらえれば、スコールがどんなものは、容易に想像することができます。それが来たのです。
日本の「ゲリラ豪雨」とは違って、この時期のシンガポールでスコールは決して珍しいものではありません。




博物館のコンコース。ほどなく大量の雨が落下してきて、天井のガラスにたたきつけています。雷も鳴り出し、どこかに落ちたような音もしています。リニューアルして一年ちょっとしか立たないこの博物館。ガラス張りの天井は大丈夫なのか?とちょっと心配になってきました。落雷して割れたりしたらたいへんなことです。たくさんの人々が行き交う博物館のコンコースに、ガラスの雨とほんとうの雨が降り注いできます。
おそらくこのときに、シンガポール名物マーライオンをめがけて雷が落ちてきたようです。むろん、私にはそんなことを知るよしもありません。しかし早速翌日、日本ではニュースになっていたようです。


そのさらに翌日の月曜日、ホテルにあった地元紙を手に取ると、一面のトップにマーライオンの写真。それも木組みの足場に覆われた姿。「マーライオン、檻の中」の見出しが躍っています。
早速その朝、マーライオン公園に行ってみました。
マーライオンは足場のまわりにさらに青いネットで囲われ、ほとんど見えない状態。ネット越しにみると、頭のてっぺんに落雷したらしく、頭頂部から後頭部にかけての一部が破壊されているのが見えました。



シンガポール名物を観にはじめて訪れた観光客には残念だったかもしれませんが、この「修理中」のマーライオンは珍しいです。私は何だか得をした気分にすらなりました。
他の外国人観光客の多くは、その後ろにある「小マーライオン」のところで写真を撮っていました。




そういえばこのマーライオンシンガポールの名物ながら、よく「世界三大ガッカリ」のひとつといわれていたものです。ちなみに他の二つは、コペンハーゲンの人魚像とブリュッセルの小便小僧。いずれも有名なわりに、実際訪れてみると思ったより小さくて、しかも目立たない場所にあるという理由から「ガッカリする」ということらしいです。
そうした「不名誉」を挽回すべく、シンガポールマーライオンは、埋め立てによって湾の奥へと引っ込んでしまったかつての設置場所から、2002年現在のマーライオン公園に移設された結果、かなりよく目立つようになりました。かつては1日2回しか吐き出されなかった(それもたいていは故障中だったりした)噴水も、いまは常時吐き出されるようになり、正面から見えるように桟橋が造られ、夜にはライトアップもされています。
しかし、観光客を「ガッカリ」させないように、海に面した目立つ場所に移設された結果、今回のような落雷に遭う結果になってしまいました。
マーライオンにとってはとんだ災難でしたね。。。



元気なときのマーライオン ↓